あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─
でこぼこの地面と自分の足との境目がわからない。まるでその辺りに生えている木にでもなってしまったのではないかと錯覚させるほどに。ただ、頭のなかだけは(いた)く冷静だった。

もちろん混乱と恐怖心はそう簡単には拭えやしない。それでも、一つだけ思うこと。揺るがない想い――美菜は綺麗だ。

こんな状況で、こんな非現実的な空間で、頭が可笑しいのではないかと吐き捨てたくなる。そんなのわかってる。それでも思ってしまった。感じてしまった。焦がれてしまった。自分があんなことをしておいて、綾の死と何らかの関わりがある人物かもしれないのに。

ぞくりと、背筋を駆け上っていくその快感の理由は。


「《ゆるさないから》」


数メートル先。

追い掛ければすぐに追い付ける距離にいる少女を、俺達は言葉の意味と重さを理解して追うことが出来なかった。気が付けば、ひぐらしの鳴き声はもう聴こえない。森が、深い眠りに入る。

恐らくは美菜と共に。
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