あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─
≪3≫ 再会と再往


あれからどのようにして森を抜けたのか、あやふやにしか覚えていない。興奮が冷めきった今となっては、美菜の幻影に惑わされてしまっただけのような気もするけれど。

畏怖の念か、後ろめたさか。

どちらにせよ碌でもない腐りきったクソみたいな感情。それが美菜を作り出してしまったのだとしたら、一応の説明はつく。それでも偽物にしてしまえない恐怖(リアル)は〝二人〟で感じ取ってしまった。


「千秋」
「……ん、ああ」


白檀(びゃくだん)のほのかに甘い香りが充満する部屋のなか、トンと優しく叩かれた背中。喪服姿の聖は、表情を殺して密やかに囁く。


「大丈夫か?」
「…まあ、そうだな、なんとか」
「顔色ひどいぞ」
「っ、それは、……いや、なんでもない」


逆に、何でお前はそんなに平然としていられるんだよ。〝あれ〟を一緒に見ておいて。お前の方こそ大丈夫なのかと問うてやりたい。
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