あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─
まあ、俺にだけは言われたくもないだろうけど。


「外に幸次が居たんだけど、千秋も会って来るか?」


パキッと目の奥が弾けたような鋭い痛み。

早紀との再会が衝撃的だったせいか、幸次も――と無意識に構えてしまったのかもしれない。そんな俺の情けない心中(しんちゅう)を察してくれたらしい聖は、更に声のトーンを落として言葉を続けた。


「幸次は何も変わってないよ。少し太ったぐらいかな?」
「……そうか」
「ん、だから安心して会ってきな」


ひそひそと、通夜の参列者からは噂話が聞こえてくる。


(それは、そうだろうな)


こんな田舎の平和ボケした土地では無縁だったはずの殺人事件。

村人全員と顔見知りといっても過言ではない狭い世界での話だ。今この場所でだって油断すると引き摺られそうで息が詰まる。

特に綾と仲が良かった俺達には不躾で容赦のない好奇の目がそこら中から悪意を持って向けられ、それが苦痛で仕方なかった。
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