あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─
今でも充分ガキだけど。

無知で馬鹿だったあの頃よりは幾分か大人に近付けたとは思う。その、弊害とも言えようか。俺達は多くを語らなくなった。

手に取るようにわかっていた皆の考えも、行動も、なにひとつ解らない。聖の本音、幸次の本音、早紀の本音、今では尋ねることさえ出来ない綾の本音だって、なにも、なにも解らない。

なにせ自分自身の本音すら見えていないのだから。


「おやすみ」
「……おやすみ」


近くに居るはずの聖の声が遠い。

後はもうただ蛙の鳴き声が耳に残るばかりだった。

大きく目を見開き、天井の木目をなぞるように見つめると、先刻の夢が鮮明に蘇る。実に生々しい夢だった。まるであの日にタイムスリップでもしたかのように。脳が、五感が、引き摺られる。

互いの皮膚一枚、首筋から伝わる脈動、体温、汗、いろ。
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