あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─
自分の保身で精一杯になっている俺は気付かない。


「明日、森に行ってみないか?意味なんてないのかもしれないけど、……美菜に」
「っ、おお!それがいい!そうしよう!誠心誠意謝ったらさ、許してくれっかも……って、そんな都合の良い話はないんだろうけど、でも、さ」
「……そうだな」


今更出来ることなんてちっぽけでくだらないけれど。それでも縋りたかった。本当に進むべき道を踏み外した俺は、俺達は。

更なる恐怖と対面する。


「綾と、早紀の葬式にも出ないとな」
「……ああ」


気付かない、気付けない。

この日、せめて家に帰っていれば。そうすれば何かが変わっていたのかもしれない。早紀からの手紙を読んでさえいれば。

〝千秋へ〟

俺を名を呼び、託した、彼女からの最期のメッセージを。
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