あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─
≪6≫ 嘲笑う鴉


「ひーじりぃ!お客さんだよお!なんだか東京からわざわざ会いに来て下すったってえー」


聖の祖母は昔から耳が遠くて声が大きい。家中どこにいたってすぐに届く。そんな大声で呼ばれ慣れているはずの聖の表情が曇ったのは、不穏な音が乗せられていたからだろうか。

一抹の不安を覚え、幸次と共に聖の後に続く。

築年数の古い木造一戸建ては歩く度にギシギシと短く悲鳴を上げ、聖の焦りや苛立ちを汲み取って泣いているかのようだった。


「君が相馬(そうま)(ひじり)くん?ああ!藤川(ふじかわ)千秋(ちあき)くんに笠岡(かさおか)幸次(こうじ)くんも?ははっ、ラッキー!全員揃っているじゃないか!」


帽子を目深にかぶり、無精髭を生やした見ず知らずの怪しい男。


「はじめまして、僕は〝烏丸(からすま)廉次郎(れんじろう)〟」
「からすま、さん」
「週刊誌の記者をやっています」
「……記者?」


(いぶか)しげに聞き返す聖に向かって、烏丸と名乗る男はにんまりと不気味に口角を上げた。直感でわかる。こいつ、ろくでもないって。


「此処では話さない方が良いと思うんだけど、……どうする?」


ほらみろ。思った通りだ。

頭の回転が速い聖は、最初から見当すらついていたのかもしれない。ぐっと拳を握り締め、素早く踵を返す。迷いなく真っ直ぐに。
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