あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─
 
「ごめんな」


ゆっくりと、そう(えが)いた聖の唇は。

数コンマ先の未来を予期していたのだろう。全身に巻き付くような異常な空気が真夏の気温を数度下げた。この感覚は何度目だ。

来る、クル、狂る、くる、美菜が。


「……千秋!」


名前を呼ばれたと同時に、指先から伝わるひんやりとした体温。

冷たいけれど、人の温かさを持つ手。

もう何度目かもわからない。いつも、いつも、俺は聖に助けられていた。今も、昔も。ずっと助けられ続けている。

主導権を失った足はふらつきながらも淀みなく前へと進む。身体中にあたる木の枝や草の葉が痛くても。走って、走って、走った。

聖の心の内を知る由もしないで。導かれるままに、獣道を走った。
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