あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─
じわじわと追い詰められていく感覚に、五感全てが支配されても。手の温もりだけは消えない。消さないでいてくれた聖。

――最期の、その瞬間(とき)まで。


「っ!……はあ、はあっ、ちあ、き」


全力疾走をして数百メートルほどでひらけた森のなか。そこは先程の場所とは打って変わって光に満ち溢れていた。

目の前には崖。後ろには隠匿の森。明暗を分ける二者択一。

〝生〟か〝死〟か。


「なあ、さっきの続きだ。死んで償うのと生きて償うの、どっちも……辛いに決まってるよな。それでもやっぱり生きていて欲しい、生きて、償って欲しい。これは俺の、俺達の総意だよ千秋」
「い゙、やだ!止めろ……聖い!」


聖の後ろで、白い影が揺れる。


「違う!生きるのは聖だ!……っ゙、なあ、なあ、美菜!お前は美菜なんだろ?!だったら…!俺を連れていけ!……聖は…お前が想っていた聖だけは…!」
 
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