あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─
そんな絶妙なバランスを保っていた俺達の関係が変わったのは、いや〝俺〟が変わってしまったのが、この夏。

奇しくも自分が提案したほんの遊び事で何もかもが崩壊する未来に繋がるだなんて。当時の俺には想像すら出来ていなかっただろう。

――千社守祭(ちしゃもりさい)


変化の無い日常との決別。
全ての、終わりと始まりの日。


「そういや、千社守祭って夜中からのは十五歳にならないと参加出来ないんだよな。ぜってー大人らだけで集まってウマいもん飲み食いしてると思うわ。ずっりい~!」
「千秋はなんでか知らないの?」
「あー、祭りのことは聞いても教えてくれないんだよ。……ムカツク、あの糞親父」


だらだらと喋りながら歩く田舎道。愚痴って、笑って、茶化して、また笑って。沈黙を知らない会話のリレー。


「ああ、でも、婆ちゃんから祭りのユライ?は聞いたことがあるよ。昔、この地方には千の社があって、その神々から守って貰えるように……とか、なんとかって。それで〝千社守〟な」
「流石ひーちゃんだね」
「おおー!すっげえすげぇぇ!でも、言ってることの意味の半分以上わかンねえぜ!俺!」
「威張んな、幸次」
 
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