あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─
幼少期の楽しかった夏休みの想い出の一つ、にならなかったのは。


「じゃあ、夕方に」
「おー!」
「またあとでね~」
「遅れたら罰ゲーム!」


この日、芽生えてしまったから。


「帰るか、美菜」
「うんっ!帰ろう」


小学校低学年の頃は、周りの目を気にすることなく自然と手を繋ぎ合って歩いていた帰り道。それをしなくなった理由は何だったのだろう。少年と少女から、少しずつ変化する身体と心。

〝好き〟なんて未だわからない。

わからなかった。でも、不確かながらに大きくなるものの成長を止める術も知らなくて。踏み込めば泥濘に嵌まって抜け出せなくなるほどの想いがあることも理解出来ていなかった年齢。

良くも悪くも幼かった俺達。
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