終わりかけの永遠に
永遠その5

勇気

「...これで分かっただろ?どれだけ俺が最低なヤツか」


騎田くんは俯いていて、表情が読み取れない。

私は話を聞いている間、ずっと涙を流すことしか出来なくて。
自分の無力さが痛いほど分かった。

でも、これじゃ、誰も幸せになれない。
騎田くんはずっと過去を引きずって苦しみ続けるし、明くんはきっと安心できない。


「これでもあんたは俺と友達になりたいっていうの?」


騎田くんがそう言い、私はすぐに頷く。


「はぁ...正直、理解出来ないんだけど」

「私は...元の騎田くんに戻って欲しい」

「何言ってんだよ!それじゃあまた、誰かを傷付ける...っ...また...誰かを裏切る...」

「...騎田くんはさ、騎田くんじゃなくなって行こうとしてるんだよ?」

「それでいいじゃねぇか!あんな俺に戻るの...俺は望んじゃいねぇんだよ!!!」

「騎田くんじゃなくなるってことは、明くんが好きだった騎田くんがいなくなるってことなんだよ!?」


私は騎田くんに思いをぶつける。
分かって欲しい、ただその一心で。


「騎田くん、明くんがいなくなったときどんな気持ちだった?騎田くんは、明くんと同じことをしようとしてるんだよ!?自分を殺して、自分じゃない誰かに、飲み込まれようとしてるんだよ!?明くんが...明くんがそんなこと望んでるわけないじゃん!!!」


きっとそうなんだ。
騎田くんに聞いたことしか、明くんのことは知らない。
でも、明くんは...純粋で優しくて、ちょっと弱虫な騎田くんが好きだったはず。

そんな騎田くんが、自分を嫌って、卑下して、感情までも押し殺そうとしている。

そんなの、嫌に決まってるはずだから。
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