ねがい
あかりおねえちゃんは、ぼくのおねえちゃんの名前。
仲良しで、ぼくたちはいつもいっしょだった。
おねえちゃんといっしょに遊ぶと楽しかったし、おねえちゃんはいつだってやさしかった。
石をにぎっていた手をそっとひらいた。
透明な石が、コロンと手のひらでころがる。
石が柔らかい光に包まれて。
ぼくはそれを見ているうちに思い出したんだ、おねえちゃんがこの石をくれたときのこと。
『ねえ、コウタ。これはお守りよ、二人のお守り。おそろいだよ、大事にしてね?』
『うん!!ぼく、絶対になくさない!!絶対絶対だいじにする』
『約束よ、コウタ。コウタが幼稚園に行って、私が小学校に行ってても、これを持ってれば二人はいつも一緒』
ゆびきりげんまん、うそついたらはりせんぼん、のーます。
お母さんが小さな袋を作ってくれた。
石をこれに入れておけばなくならないよって、おねえちゃんとおそろいで作ってくれた。
「思い出した、コウタ?」
「うん、これはおねえちゃんとぼくのおまもり」
そっと石を指で撫でてみた。
石はちょっとあったかくなっていた、光はもうなくなっていて、透明な石に戻っている。
でもぼくにとってもっともっと大事なお守りになった。
あかりおねえちゃんと約束したんだもん、ぼくはこれをずっと大事にするって。
ずっとずっと持ってるって。
「さあ、行こう」
あかりおねえちゃんが待ってるよ。
ぼくは風太くんに大きくうなずいて、もう一度ぎゅっと石をにぎった。
待っていて、おねえちゃん。
ぼくはもうすぐ、風になっておねえちゃんを守るよ。
おねえちゃんのそばにずっといるよ。
だからぼくのこと、忘れないで。
ぼくはもうそこにはいないけど、ぼくは風になってここにいるから。
いつもおねえちゃんと一緒にいるよ。
Fin.
