好きを百万回。


「そこまでするなんておかしいわよ・・・・・」
膝の上で握った拳が震える。

「だってK大出で帰国子女、お父さんは商社マン、イケメン、2年後にはMBA取って銀行で出世間違いなし。これだけ条件のいい男いないやない」

「恋愛は条件でするものと違うでしょ?」

「恋愛ならね。けど結婚は条件よ」

「そんなことで選ばれたら野波さんが可哀想ーーー」

「アンタの意見なんて聞いてないし。とにかく明日までに考えて返事聞かせてよ」

ビジューがいっぱいついた黒いパンプスを履いた細い足首が、向きを変えてドアの向こうに消えた。

驚きと悲しみで心がいっぱいで、泣きたいはずなのに涙も出ない。立ち上がらないとと頭は体に命令するのに、力が抜けて座り込んだまま。

どうしてーーー?
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