好きを百万回。


背後でカチャリと個室の鍵が開く音がした。

「木下さん・・・・・大丈夫ですか?」

山岸くんと同期で後方事務をしている女の子だ。躊躇いがちに腕を取って立ち上がる助けをしてくれる。

「・・・・・聞こえてた?」

「すみません・・・・・聞くつもりはなかったんですけど・・・・・」

申し訳なさそうに目を伏せる。

「内緒にしてて」

「でも木下さん、これあんまりですよ!」

「そうやね・・・・・でも誰にも言わないで。野波さんも本当に今大事な時期なの。わたしなら大丈夫やから」

「木下さん・・・・・」

「ごめんね、ありがとう」

無理矢理笑顔を作りトイレを出る。打ち付けた膝が痛い。

別れたくない。
ずっとずっと傍にいたい。

考えなくても心が叫んでる。


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