好きを百万回。


「そんなん3ヵ月でしょー。いっそ辞めずに休職して行ってくれたらええのにって役職全員言ってますよ」

「ありがたいけど、もう決めたから」

食堂の内線電話が鳴り、電話の近くで食べている取引先課の男の人が席を立って取った。

「佐藤さーん、窓口混んでるから手伝ってって課長がー」

「はあーい。じゃお先に」
手早くお弁当を片付けて、一緒に食事をしていた人達に挨拶をして駆け出した。

銀行でお仕事をするのもあと1ヵ月と少し。

わたしは稜子先生の勧めもあって、10月からハワイにキルトの勉強をしに行く。
稜子先生の恩師でもある人のところで3ヵ月の予定だ。

銀行を辞めると、定期的な収入がなくなって辛いけれど、行くなら今だと決心した。

お母さんが遺してくれたものもあるし、自分1人くらいアルバイトしてでも食べていける。
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