好きを百万回。


書類の記入漏れを見つける。
作成者のところを見ると、志田くんのハンコ。軽くため息をついて、志田くんを呼ぶ。

「記入漏れあるよ。志田くん、仕事出来るんやし落ち着いて最後もう一回見直してね」

「はい」

「わたしが辞めるまでのあと2ヶ月でしっかり覚えてね」

「覚えなかったら辞めるの止めますか?」

「は?」

「必死に明るく振舞ってなんかから逃げてはるような気がします」

・・・・・・・・・・この後輩は何故だか何気に鋭くて、油断をしてると心を抉られる。

「気の所為と違う?ってか女心を語るには100万年早いから」



何かから逃げる・・・・・。
そんなのわかってる。


自分が手放した幸せの大きさを思い知って、打ちのめされて、もうこれ以上ずっと血を流し続ける心を痛めつけるのをやめるために・・・・・・・・・・。




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