初恋は一言から

ガチャッ

ガヤガヤガヤガヤ。

放送して一分もたたなぬ間に人がなだれ込んできた。

暑苦しい。

「注目!」

ガヤガヤ。

全然静かにならん。

これでは話せないではないか。

「君たち、話を聞いてくれるかい?」

ほんの少し、ほんの少しだけ殺意を込めた笑みで静かに言う。

ビクっと体を震わせる教師たち。

恐怖に襲われた顔をして黙りこくった。

ちょっと怖がらせてしまったと反省しつつ静かになったので良しとしよう。

「今日から入学する新入生について頼みたいことがある」

「新入生の中に1人だけ見た目が少し変わっている生徒が入学するので僕のもとへ連れてきてくれないか?」

不思議そうな顔をしながら返事をする教師たち。

見た目が変わってると言うだけで伝わるだろうか。

まあおいおい説明すればよかろう。

「いつもは風紀委員が正門前に立っているところに一人教師も一緒に立ってもらう。その新入生を連れて来る役割としてな」

沈黙が部屋を支配する。

めんどくさい仕事を押し付けられたくない顔でいっぱいだ。

「立候補者はいないか?」

返事がない。

「仕方がない。こうなったらクジで決めるとするか」

机の下からクジ箱を取り出す。

教師全員のネームプレートを箱に入れかき混ぜる。

僕を見る目がちょっと冷たかったり呆れているような感じだけれど気にしない。

ちょっと悲しいけど。

「では…この人にお願いするとしましょう」

箱から一枚のネームプレートを取り出す。
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