十日目の判決 -完-

4. 5月16日






朝からバタバタと準備する。今日は結希と約束した日だ。

玄関にある全身鏡で自分を確認する。

ふわふわに緩く巻かれたシルバーブロンドに近いブロンドの私の髪。…違和感あるなぁ。


いつもはまっすぐストレートで前髪は横へ流しているけど今日はアイロンでくるんと前髪を作っている。


全体的に幼い感じ…かな。

あー、私何やってんだ。少しでも可愛らしいほうになろうなんて。バカらしい。


結希みたいに可愛く、なんて対抗する必要ないのに。

私は結希みたいな可愛さが欲しいのだろうか。人工的に作り上げたブロンドの時点でムリだろうけど。


高さのある靴を履いて、外へ出ようとすると玄関のドアが開いた。


「あ、いの?でかけんの?」


兄だ。朝帰りですか、そうでしょうね。爽やかにシャンプーの匂いがするよ。

私の4つ年上の兄は毎週金曜日は飲みへ出かける。華の金曜だとか、何とか。古いな。

玄関へ入って来た兄におかえりと言って兄の横を通る。


「男でも変えた?可愛いね。」


私の姿を見つめてニヤニヤと兄が言う。うるさいな。

雰囲気が違う私に戸惑ってるのは私だ。好きな人が出来ると人は変わると言うけど、出来てないし彼氏と別れてないし。

あーもう、バカらしい。閉まりかけた玄関のドアを開けて兄の方へ振り返り言う。


「マーキング、彼女にバレないようにしな。うなじにある」


バタンと扉をしめた。閉まったドアの向こうから慌てる兄の声がする。



そろそろ落ち着けば良いのに。あの年であんななのは兄くらいだぞ。





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