血の雫








ぼんやり何も考えず歩いていると、ふと見覚えのある場所に辿り着いた。

大きな木が目立つ、公園。




「ここ……」




自然と足が公園内に向かう。





アキナと、

初めて出会った場所だ……。





「懐かしいなぁ……」





僕は木の下に座りこんだ。

土が濡れているけど、気にしないでおく。





吸血鬼界から人間の世界に降りた時、気が付いたらここにいたんだよね。

外は凄く暑くて、危うく消滅するかと思ったよ。

あの時の暑さを思いだして、僕は苦笑いを浮かべた。




頭上に木はあるけど、雨が当たるのは変わらない。

ヌメヌメした土に、自分の手を埋めると、泥が付いた。




「アハ…汚いや……」




僕、幸せだったよ。

アキナに出会えて。

宇津木拓也に出会えて。…特に何もなかったけど。

クラスメイトに会えて。





あんなに楽しい思いを最後に出来るなんて、

僕は世界一幸せな吸血鬼だったな……。








< 106 / 141 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop