血の雫
ぼんやり何も考えず歩いていると、ふと見覚えのある場所に辿り着いた。
大きな木が目立つ、公園。
「ここ……」
自然と足が公園内に向かう。
アキナと、
初めて出会った場所だ……。
「懐かしいなぁ……」
僕は木の下に座りこんだ。
土が濡れているけど、気にしないでおく。
吸血鬼界から人間の世界に降りた時、気が付いたらここにいたんだよね。
外は凄く暑くて、危うく消滅するかと思ったよ。
あの時の暑さを思いだして、僕は苦笑いを浮かべた。
頭上に木はあるけど、雨が当たるのは変わらない。
ヌメヌメした土に、自分の手を埋めると、泥が付いた。
「アハ…汚いや……」
僕、幸せだったよ。
アキナに出会えて。
宇津木拓也に出会えて。…特に何もなかったけど。
クラスメイトに会えて。
あんなに楽しい思いを最後に出来るなんて、
僕は世界一幸せな吸血鬼だったな……。