イジワルな先輩との甘い事情


古川さんは当たり前のように先輩の部屋に行ってインターホンを押したけど、先輩は玄関にも入れないまま、案内予定の部屋を教えて、そこからは不動産会社の人に任せたって言っていた。
もちろん、古川さんは気に入らなそうにしてたみたいだけど、でも部屋を見たいならどこでも問題ないんじゃっていう先輩の言葉には何も言えなくて、そのまま別の部屋を案内されたらしい。

先輩は立ち会う必要もないから、入居が決まったかどうかまでは知らないって言っていたけど……多分、入居はしないだろうって言っていた。
なぜかと言えば。

「部屋の説明が終わった後、古川さん先輩の部屋に来たんだって。で、その時告白みたいな事言われたらしくて……でも断ったから、多分、あのマンションには住まないと思うって先輩が言ってた」
「へー。なんか話聞いてると、ひとり暮らししたいとかってただの口実なんじゃないかって思えてくるな。
部屋見たいっていうより、北澤さんちに上がり込みたかっただけみたいな」
「先輩も、そんなような事は言ってたけど……。それに、早めに告白してきてくれたからキリがついてよかったって。
好意チラつかされても断るわけにはいかなくて面倒に思ってたから、ハッキリ言ってきてくれてよかったって言ってた」
「だよなー。相手が相手だから、無碍にできないし、向こうのアクション待ちするしかないし。
で、それで決着ついたのか? なんかすんなり引き下がらなそうだけど」

そう聞いてきた松田に……苦笑いを返してから、先週の出来事を話した。
四日前の土曜日、先輩のマンション前で古川さんに待ち伏せされたって事を。


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