イジワルな先輩との甘い事情


「ちゃんと聞いたんだろ?」と聞く松田に、昨日、先輩から聞いた事を説明する。
先輩と仲直りできてちゃんと付き合える事になったっていうのだけは、園ちゃんと松田に伝えてあったけど、最近は仕事量も多くて詳しくは言えていなかったから。

「古川さんのお父さんが、常務だって事は知ってるでしょ? 先輩、古川常務に、古川さんがひとり暮らししたいって言うから部屋とか面倒見てやってくれないかって頼まれたんだって」
「へー。でもなんで北澤さんに頼んだんだ?」
「それはやっぱり、古川さんが先輩を気に入ってるからだと思う。先輩を指定したのは古川さんだって言うし」
「ふーん。なんかアレだな。古川さんって使える七光りは全部使うんだな」

ははって苦笑いを浮かべる松田が「それで?」って先を促す。

「それで、付き合って欲しいとかいうお願いでもないし部屋探しじゃ断る理由もないから、仕方なく受けて、どんな部屋がいいのか聞いたりしてたら、先輩のマンションが話題に上がったらしくて。
古川さんに、部屋見せて欲しいって言われて困ったって言ってた」
「うわー、露骨だなー。なんか……肉食系が目立つな、最近」

松田の言う〝肉食系〟は、古川さんと安藤さんの事だろうか……もしかしたら私も含まれるのかもしれないなと思い眉を寄せて笑みをこぼす。

「口頭で伝えたら気に入ったらしくて、見たいってあまりに言うから、先輩、不動産屋に連絡入れて空いてる部屋を案内してもらったんだって。
二週間前の日曜日、園ちゃんと三人で後つけた時、古川さん、先輩のマンションに入ってったでしょ?
あの後案内したんだって。古川さんは、先輩の部屋見せてもらえると思ったから、あんなにご機嫌だったみたい」
「あー、あん時か。なるほどなー」
「私もてっきり先輩の部屋にいるんだと思ってたんだけど……違くてホッとした」

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