君待ち人





凪雲先輩が総合病院の方角を見ていた意味も、儚い横顔に孕んだ想いの名前も、ようやく全てわかった。



現実はあまりにも残酷で、狂おしい。


涙ばかりが溢れてくる。



彼はその現実から逃げずに、ずっとここで待っているんだ。


大切で、大好きな、あの人を。





ずっと前に“三日後”は過ぎてしまったけれど、凪雲先輩は諦めていない。諦めるという選択肢がなかったんだろう。


約束と呼んでもいいのかもわからない不透明な待ち合わせを信じて、凪雲先輩も一歩踏み出したんだ。愛しい想いと待ち人の幸福のために。






当事者でもないのに、なぜか私が泣きそうになっていた。



でも、泣いちゃダメだ。

凪雲先輩だって涙を拭って、ここで海さんを待っている。私が泣いても、何も変わらない。



目の渕から大粒の涙がこぼれかけ、慌てて顔を真上にずらす。


水彩のような青空を喰い殺す夕焼けが、心臓を容赦なくえぐった。




< 248 / 278 >

この作品をシェア

pagetop