君待ち人
あの男の子の顔や名前を少しでも思い出すことができたら、待つだけじゃなくて近辺だけでも探せるのに。
「俺は、夢の中で何度も待ち人の姿が出てきて、……いなくなる」
凪雲先輩は閉じていた目を開けた。太陽の眩しさに、再び一瞬だけ目を閉じる。
……え?いなくなる?
その表現がひどく恐ろしくて。
また凪雲先輩が辛そうにしているんじゃないかと彼を見たら、やっぱり辛そうに顔をほころばせていた。
また私は、彼を苦しみに追いやってしまった。
ズキン、ズキン。鼓動の音が、急激に鈍くなる。
ごめんなさい、と謝ったらさらに傷つくだろう。
私は黙ることしかできなかった。
「夢を見る度、もどかしくなります」
「……あぁ、俺もだ」
どうして約束は、こんなにも人に憂いを植え付けるんだろう。
私は、私自身の約束ではなく、凪雲先輩の表情や約束に涙腺が緩んだ。
待つのが楽しい約束だけじゃない。そんなこと、わかってたのに。