僕の初恋



私は鈴の音が嫌いだ。

小さい頃からそうだった。

先生はいつも実験で使う鈴を取り出した。

その鈴はとても古いもので、分厚い銀でできている。

とても手入れが行き届いているみたいで、いつもピカピカしている。

私は白い手術台に横たわっている。

先生が鈴を鳴らす。

「大丈夫、キヨノちゃん。心配いらないよ」

私が嫌な顔をしていることに気付いたのか先生がそう言った。

りぃーん、りぃーん。

何度も鳴らす。

私は目眩を感じた。

鈴の音がだんだん遠ざかっていく・・。

そして私は意識を失う。

・・・。

目が覚めると同じ手術台の上だった。

「キヨノちゃん大丈夫かい?」

先生が心配そうに私をのぞき込んでいる。

壁の時計を見ると5時間ぐらいたったようだ。

体のあちこちが痛い。

「先生、私? 」

起き上がろうとすると、体に力が入らない。

「あぁ、動かないように。大丈夫しばらくすれば元に戻るから」

先生はにっこり笑ってそう言った。



お父さんは一人前になるまでは言うことをきかなくてはいけないという。

だから小さなころからお父さんの言うとおりにしてきた。

もちろん望んでいたわけじゃないけど、言うことをきかないとお父さんは私を叱る。

今でも時々思い出す。

暗い部屋に閉じ込められて、お父さんの大きな手で押さえつけられたことを。

私は大きな声で助けを求めたけど、誰も助けてくれなかった。

だから私はあきらめることにした。

今までの人生で楽しいことなんて無かった。

仲の良い友達ができると、いつもお父さんが出てきて壊していった。

だからそのうち、誰も私の周りに寄らなくなってしまった。

学校の担任もお父さんから何か言われているみたいで、腫れ物に触るように私に接していた。




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