図書館で再会した君を…
心ごと掴まえてみせる。

初めて君に会ったのは、俺が小学生の頃。

学校区域の末端に住んでいたせいもあり、足を運ぶのは近くにある隣の市の図書館だった。

塾の開始時間まで時間を潰すと言ったら、専らその図書館での読書。
元々読書が趣味に定着しつつあった俺にとっては、暇潰しというよりは充実した時間で。


いつもの様に図書館で適当な本を選び、読みきれない事を分かっていた俺は、その本を手にして受付に向かった。

その時、息を切らせながら駆け込んできた一人の女の子が、バッグの中から慌てて本を取り出し、
『ありがとうございました!』
と言いながら、来た時と同じ様にして図書館の入り口に向かって走って行ってしまった。

ふと足元を見下ろすと、水色の生地に魚模様がプリントされたハンカチが落ちていて。

しゃがむこともしないまま腕を伸ばし、それを拾い上げた。
受付カウンターの脇にある『落し物箱』に一度目を向けてはみたけれど…

俺は、その魚を水槽の中には入れずにポケットに押し込んだ。




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