イジワルな旦那様とかりそめ新婚生活
大きくて温かい手。もっと冷たい手だと思ってたのに……意外というか、調子が狂う。

病院の中に入り、長い廊下を刹那さんに手を引かれながら小走りで歩く。

エレベーターに乗り五階で下りると、目の前の病室の扉を刹那さんはノックせずに入った。

五十インチ位の大きなテレビがある豪華な個室。一日何万ぐらいするんだろう?なんかホテルみたい。鷹司のホテルと同じ位の値段がするんじゃないだろうか。

「じいさん、待望の花嫁を連れてきたぞ」

病室のベッドで寝ていた老人に、刹那さんが声をかける。

じいさんって刹那さんのお祖父様?

ぐったりしていたはずの老人が、刹那さんの声に反応して飛び起きた。

「おお、桜子さんか?よく来てくれた。わしは刹那の祖父の鷹司修治だ」

刹那さんのお祖父さんが瞳を輝かせながらにっこり笑う。

「今日は大事な式に出席出来なくてすまなかったのう」

「いえ……」

私は苦笑いしながら言葉を濁す。

横にいる刹那さんの視線が痛い。
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