イジワルな旦那様とかりそめ新婚生活
世の中って狭いと思う。久世さんとは大学は違ったし、まさか彼に再会するとは思わなかった。

久世さんは私の高校時代の憧れの先輩だ。

茶髪のさらさらヘアで、王子さまのような甘いマスク。背も高く、頭も良くて、優しくて、刹那さんと女の子の人気を二分していた。

私は断然、久世派だ。今も昔も。

刹那さんみたいにクールで冷たい人が良いって人もいるけど、私はやっぱり久世さんみたいに優しい人の方が好感が持てる。

恋愛感情と言うよりは、尊敬。

本の知識もあるし、ここでバイトをすると、いろいろと勉強になる。

「来て早々悪いんだけど、この本検品してくれない?」

にっこり笑いながら見せてくれたのは、ルドゥーテの『バラ図譜』。茶色い革の装丁の二巻本。

ルドゥーテは19世紀の初頭にパリで活躍したベルギー出身の植物画家。
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