イジワルな旦那様とかりそめ新婚生活
私は両親を困らせる姉を見て育ってるから、姉のような我が儘は言えない。

両親を悲しませないようにいい子でいなくてはいけない。

高輪の刹那さんのマンションの前で車を停車させると、運転席の右京さんが私の方を振り返った。

「刹那兄は帰りは深夜になると思うんだ。刹那兄の事は気にせず寝ていいよ。冷蔵庫に食材は入ってるし、食べるものには困らないと思う。足りないものがあったら連絡してね」

「実家に取りに行きたいものがあるんですけど……」

「何?僕に言ってくれれば取ってくるよ」

右京さんが私に向かってニコッと笑う。

……なんか笑顔で誤魔化そうとしてるけど、実家に物を取りに行くのも禁止なの?

「梅干しと、イカナゴの佃煮と、自然薯です。すり鉢はありますよね?」

「……それって……」

「私の飯の友です」

「ははっ、やっぱ桜子ちゃんって面白いわ。すり鉢もキッチンのシンクの下にあったと思うよ」
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