君のいいところ、1つしか思いつかない。





「…」





言葉に詰まって、カーディガンの袖を少し伸ばす。




「全然大丈夫だから、泣きそうな顔しないでよ」






困ったように弱々しく笑う蓮に、さらに胸が痛んだ。



「無理、しないで」



「え?」



「いいんだよ…弱音吐いたって」






少し震えた声でそう言うと、蓮は優しく笑って眼鏡をクイっと上げた。



「ん、ありがとう」





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