君のいいところ、1つしか思いつかない。





2人きりって、どうしてこんなに緊張するんだろう。







人の来ない階段に座るあたしたちの間には、1人分くらいの距離がある。



それでもあたしの左側にいる晴に意識が集中して、左側の髪だけ無駄に手櫛で梳かしてしまう。






「…で、どうしたの?」




「え、と…」







先生のことを話さずに何て言えばいいんだろう。


言葉に詰まった沈黙のあと、






「…篠宮絡み?」




こくん、頷いたまま俯いた。







「どうしていいか、分かんない…
力になりたいのに、背中押してあげたいのに、あたしじゃ何も出来ない…っ」






言ってることもぐちゃぐちゃで、うまく話せないこんなあたしの言葉を待ってくれる。


本当に、優しい人で。








< 200 / 296 >

この作品をシェア

pagetop