私の横に居る人
智樹先輩の名前が出てきて、私はドキッとした。

あれから実家へ帰った先輩は、夜にはラインを送ってくれる。

なんて事はない、今まで通りたわいもない話だけど。

「智樹先輩と何かあった?」

麻帆は顔を近づけてくる。

「ど…どうして。」

「悠の顔が優しくなったような気がしたから。」

「そうかな。」

私は何とかごまかそうとした。

…が麻帆にかなうわけがない。

私は智樹先輩に誘われて出掛けた事を簡単に話した。

もちろん丘の上での出来事は内緒。

話してしまうのがもったいないような気がしたから。

「そんな事がありましたか~。」

ニヤッとする麻帆の顔がいやらしい。

「いくら映画のせいだからって、悠が男の人に泣き顔を見せるなんてね~。」
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