落ちる恋あれば拾う恋だってある
エピローグ
◇◇◇◇◇



「夏帆ちゃん、お疲れ様!」

「ありがとうございます」

総務部のフロアで丹羽さんから花束を渡された。人生で二度目に貰った花束は大きくて片手じゃ抱えるのが大変だ。

「4年間楽しかったよ……夏帆ちゃんいないと寂しい……」

丹羽さんは涙ぐんでいる。私だって涙で目が霞む。

この会社を去ることに未練はないけれど、大好きな先輩と離れるのは辛い。

「丹羽さんには本当にお世話になりました」

「次の職場はきっと楽しいからね!」

「はい!」

総務部の同僚に見送られて早峰フーズを後にした。

私は今日で退職する。もう二度とこの会社に来ることもない。










あれから宇佐見さんは解雇された。早峰フーズと宇佐見さんとの間でどのような話がされたのかは分からないけれど、暴れた日の次の週から宇佐見さんの在籍している記録が消えた。

宇佐見さんは修一さんが自分と別れたすぐ後に地味な私と付き合って、関係が上手くいっている様子が腹立たしかったらしい。
本当は修一さんと別れたくなかったけれど、修一さんの気持ちが宇佐見さんから離れていったと気づくと先に別れを告げた。振られる前に修一さんを振った。

社内で人気の修一さんと別れたことで自分に悪いイメージがつくことを恐れて私の噂を流したり、修一さんのことも悪く取られるような噂を流して同情を誘った。
それでも私が気にしていないような素振りを見せたことで増々宇佐見さんを苛立たせたようだ。

プライドを傷つけられたと勝手に思い込み、仕事にも身が入らず一日社内でぼーっとしている日もあったという。営業推進部内では精神的に病んでいると思われていたそうだ。

今度は椎名さんを好きになったのに、椎名さんは私と仲が良いと思い嫉妬して更に怒りが増してしまったようだ。

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