落ちる恋あれば拾う恋だってある
倉庫で過去の取引書類を探していた時、ドアが開く音がして同時に女性の話し声が聞こえた。
「確か去年ここに置いたの」
「早く探しちゃおうよ」
倉庫の奥にいる私からはキャビネットに隠れていて女子社員の顔までは分からなかった。どうやら二人いるみたいだ。向こうは私がいることに気づいていない。おしゃべりしながら何かを探しているようだ。私の存在を知られたくないので音を立てないよう気をつけた。
数分後、再びドアが開く音がしてもう一人入ってきた。
「ごめん遅くなって」
「いいよー、まだ見つかってないし。何かあったの?」
「それがさ、さっき総務の北川さんにタイムレコーダー打刻してない日が多すぎるから、1ヶ月分の出勤退勤と外出の時間を別紙に提出してって言われちゃってさ」
「うわ……めんどくさ」
「誰? 北川さんって」
「あれだよ、総務の地味子ちゃん」
「ああ、あの子」
自分の話題が出て私は手を止め耳を澄ませた。
倉庫に来る前に社員にタイムレコーダーに関してお願いをした。ではあそこにいる一人は営業推進部の宇佐見という人だ。
「いちいち覚えてないよー。直行直帰も多いしさ。手帳とにらめっこだよ。こっちは忙しいのに」
「あの子雑用だけやって給料もらえるんだから楽だよね」
この言葉にショックを受けた。私の仕事は雑用ではない。雑用を押し付けるのはあなたたちじゃないか。
「あの子ってさ、高校中退なんでしょ? よくうちに入れたね」
「違うよ、大学中退だって。コネ入社だって聞いたけど」
「誰のコネ? 役員の誰かと寝たって噂本当なんだ? 若いもんね」