落ちる恋あれば拾う恋だってある

「今度新しいカフェをオープンさせるんだけど、レストラン事業部が花を店内と外に置きたいって言っててさ」

「花ですか。あの方の会社はグリーンだけじゃなくて花も扱ってるはずですよ」

「そっか。相談してあの会社にお願いしようかな」

「そうですね……」

笑顔の横山さんを見て私は複雑な顔になる。また一つ、椎名さんとの繋がりができそうな予感がした。



◇◇◇◇◇



早峰フーズはビルの最上階からエントランス、ビル前の植え込みまで全て一人で作業をする。1フロアに置かれている観葉鉢の数は少ないものの、全てを回るのに1時間以上かかる。
本当は昼飯を食べてから早峰フーズに行くつもりだった。古明橋交差点で夏帆を見つけるまでは。
腹が減って仕方がないが、月に数回しかない貴重な時間に少しでも長い時間会いたい。

今日はLINEを登録してもらおうか。
仕事中に連絡先を聞くなんて不謹慎だと思われないよう仕事はきっちりやる。

食堂に入ると夏帆がお昼を食べていた。
ああ、また会えた。なんて思ったら夏帆の向かいに座る男に目がいった。俺と同じくらいの年の、女ウケしそうな雰囲気の男だ。

二人で楽しそうに会話して、夏帆は見たことのない顔で笑っていた。
俺は苛立ちを覚える。見た目は変わっても中身は地味で男慣れしてないままだったはず。
そんな顔、他の男に見せてんじゃねーよ。

俺はなるべく二人を見ないように目の前のポトスに水を与える。仕事に集中して夏帆のことを考えないように。

「あ、煮物!?」

突然の男の声に意識を持っていかれた。

「僕ジャガイモの煮たやつ大好きなんだよね」

「よければどうぞ……」
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