落ちる恋あれば拾う恋だってある
「そのタオル使うから置いといて。僕のシャツで悪いんだけど使って」
「はい。ありがとうございます」
修一さんが浴室に入ると、用意してくれた服に着替えた。
ふと見た足元の洗濯カゴには洗濯されるのを待つ衣類が山盛りに入っていた。
今夜は同じベッドで一緒に眠ったけれど、宣言通り修一さんは私に触れてくることはなかった。
翌朝、修一さんより早く起きて朝食を作った。
パンがなかったから自然と和食になって、昨日スーパーで買った食材を使った。
「おはよう……あれ? 作ってくれたの?」
修一さんが食器をカチャカチャと並べる音に起きてきた。
「おはようございます。すみません勝手に」
「ううん。ありがとう」
二人で食べて、その後にシーツと溜まった衣類を洗濯した。私が修一さんに指示をして、彼はてきぱきと洗った服を干して乾いた洗濯物を畳んだ。
何だか一緒に住んでるみたい。
心の中で妄想を膨らませた。
土曜出勤日の食堂で食べるお昼休みが一番落ち着く。社員自体が少なくて食堂を使う人は数えるほどだ。
修一さんと食べているとどうしても視線が気になるけど今日は私一人だし、今は他に女子社員が一人と離れて二人が座っているだけだ。
みんな営業推進部の人ではないから、あからさまに睨まれたり笑われたりすることはない。
「ねえねえ、最近社内で植物増えたよね」
二人で座っている社員の会話が聞こえてきた。植物という言葉に反応してしまう。
「確かに。1階も明るくなった気がするし」
聞いていた通り営業推進部が観葉鉢を置きたいと言っていたけれど、結局関係ない1階のエントランスに新しく増やすことになった。なぜか便乗して秘書室まで増やすことになってしまったのは腑に落ちないけれど。