どうぞ、ここで恋に落ちて

すると丁度そのとき、右手に見える出入口から、爽やかな水色のワンピースを着た女の子が店内に入って来た。

こちらをチラリと見た女の子と目が合う。


「いらっしゃいま……」


マニュアル通りの礼をしようと半分頭を下げ、私はハッとして顔を上げた。


「あれ、もしかして色葉ちゃん?」


私が彼女に気付いて声を上げると、色葉ちゃんは恥ずかしそうに頬を染めながらレジの方へ向かって歩いて来る。


そっか、咲さんは私と仲の良い彼女がお店の外にいるのがわかったから、わざわざレジを代わろうって言ったんだ。

それにしても咲さんは、よく遠目にもその女の子が色葉ちゃんだって気が付いたなあ。

だって、今日の色葉ちゃんはものすごく……。


「すごいね、色葉ちゃん! いつもより大人っぽくてずっとかわいい」


私が興奮気味に声をかけると、彼女は少し色のついた唇をにっこりと微笑ませた。


「特別な用事はないんだけどね、せっかくの夏休みだから」


色葉ちゃんは言い訳をするみたいにそう言いながら、慣れない仕草でワンピースの裾を手のひらでパンパンと払う。

そうは言っても、一期書店にやって来るときの色葉ちゃんは大抵中学校の制服姿だし、ときどき私服で来るときも落ち着いた色の洋服が多かったと思う。
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