どうぞ、ここで恋に落ちて

そして彼の要求通りにちゃんと言い直す。


「洋太くん、ありがとう。大好き」


ちょっとだけ照れくさくてふにゃりと笑って伝えると、樋泉さんは満足そうにはにかんで頬を赤くし、コクリと頷いた。

キュートでハンサムなスーパーヒーローは、だけどどこか等身大で素敵な人。

樋泉さんは紙袋と2冊の『砂糖とスパイス』をベッドの上からいそいそと回収すると、まとめてチェストの上に置く。


「あの、それって本当にどうやって見つけたの?」


旧訳版の入手ルートが気になって仕方ない私に向かって、樋泉さんは思わせぶりに片方の眉を上げる。


「それは言ったらかっこよくなくなるじゃん」


それからチェストに置いてあったリモコンを手に取ると、フットライトだけを残してなぜか照明を落としてしまった。


「え」

「古都ってば、ほんとにかわいい」


そう言って私の肩を掴み、そのままぽすっとベッドの上に押し倒す。


「えぇ!? ちょ、樋泉さん」

「あ、戻ってるよ」


慌てて慣れた苗字で呼んでしまうと、彼はちゃっかり指摘してくる。

同時に私が着ているシャツの裾を掴み、バンザイをさせると、いとも簡単に脱がせてしまった。
< 218 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop