蟲狩り少女
だけど、今はそれがあだとなって注目されている。


あたしはずっとうつむいたまま、この時間をやり過ごしたのだった。


後ろの男子生徒は乱暴に音を立てながら立ちあがった。


「三岳友輝(ミタケ トモキ)。趣味はボクシング。得意科目は体育です」


そう言い、三岳友輝はボクシングのファンティングポースをとって見せた。


どう見てもそれはあたしの苦手なタイプで、あたしは三岳友輝から視線をそらした。


「よろしく」


最後にそう言い、席に座る三岳友輝。


その声を聞いた瞬間、ふとさきほどの始業式を思い出した。


『あいつ……暗そうだな』


そう聞こえてきたあの声と三岳友輝の声とが一致する。


あの声の持ち主はこの人だったんだ。


振り向いたときにすぐに顔をそらされてしまったから、今まで気が付かなかった。
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