蟲狩り少女
すぐ近くに蟲がいるような、そんな気がするんだ。


と、その時だった。


光磨が何かをみつけて「あっ」と、小さく声をあげた。


「なに?」


「里音……それ」


そう言いあたしの胸元を指差す。


そちらへ視線を向けるとあたしの胸に一匹の蟲が止まっていた。


冬の蟲は雪の結晶の形をしている。


光の角度でキラキラと輝きすごく綺麗だけれど、それゆえ人間を飲みこんでしまいやすい。


「なんでこんな所に?」


あたしはそう呟き、指先で蟲をつまんで潰した。


雪蟲は灰にはならず。そのまま滴となって溶けて行く。
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