蟲狩り少女
「里音! 大丈夫か!?」


蟲たちで遮られた視界の向こうから光磨の声がする。


「光磨……!」


声の聞こえた方へと手を伸ばす。


すると、手の先から蟲たちの感触が消えていくのがわかった。


あたしがのばした手を、光磨が掴んだのだ。


光磨はあたしの手を掴み、そして体を抱き寄せた。


グッと強く引かれて気が付けば光磨の腕の中にいた。


光磨の周囲には一匹も蟲がおらず、あたしは驚いて光磨を見上げた。


「大丈夫か?」


「うん……ありがとう……」


心に少しの隙間も持っていない光磨に、あたしは少し自分が恥ずかしくなった。


家から出て来た蟲たちはすずにあたしを覆い尽くしてきたから。


あたしには心に隙間があるということだ。


「行こう」


光磨はあたしと距離を置かないように気をつけながら、玄関へ入る。
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