蟲狩り少女
「お母さん、起きて! しっかりして!」


あたしはお母さんの体を揺さぶる。


その体はあまりにも冷たくて、一瞬ゾクッとした。


しかし呼吸はしてる。


胸が上下していることを確認して、ホッと胸をなで下ろす。


「……里音……」


しばらく声をかけていると、お母さんがうっすらと目を開いた。


よかった。


気が付いた!


「お母さん……!」


「あら……こんなに濡れて、どうしたのかしら?」


お母さんは上半身をベッドの上に起こし、周囲が水浸しになっていることに首を傾げた。


蟲に浸食され、何も覚えていないみたいだ。


あたしはそんなお母さんを抱きしめた。
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