蟲狩り少女
現に、あたしは人間が蟲に殺される前に、蟲を殺す役目をしてきている。


蟲からすればあたしだって殺人鬼だ。


だけどそんな話はお母さんにはしない。


蟲狩り師だったお父さんの事を理解し、受け入れ、あたしという子供まで生んだ人。


素晴らしい女性だと思う。


普通蟲狩りの話なんて聞かされても信じないか、拒絶するという反応が帰ってくる。


でも、お母さんは違う。


お父さんが初めて蟲狩り師の話をしたときから、ずっと真剣に向き合っているみたいだ。


しばらくお母さんと一緒にテレビを見ていたあたしはソファを立った。


「宿題してくるね」


「そう。勉強も頑張ってね」


そう言うお母さんはもういつもの穏やかさを取り戻している。
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