無口なキミと同居します。


「…ねぇ、例えばだけど」


滅多に自分から話を切り出さない遠野が、自分から口を開く。

ん?って答えると彼は私の方をゆっくり見た。


「…俺と柏野先輩だったら、どっちの方が服選ぶの苦戦する?」


「…え?」


少しだけ首をかしげた彼の顔はいつもと変わらず無表情。

けど…遠野は何をどうしてそんな事を言い出したんだろう。


どっちが苦戦するか?
…それはどっちの方が悩むかって事で。



想像もつかなかった質問に、回らない頭を必死に回転させる。


きっと私は…、


「遠野…かな?」


だって遠野の出かける時に、可愛くない格好して行ったら冷たい顔されそうじゃないか。

柏野先輩はあまりそんなこと気にしなさそうだし…。



…本当、それだけの理由だった。





< 130 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop