シンデレラに恋のカクテル・マジック
「がんばらなくちゃいけないのはわかるけど、今日くらい息抜きをしたら?」
「そうじゃ……ないんです」

 永輝が菜々の髪から手を下ろした。

「そうか……働いている方が悩む時間がなくていいって言ってたね……」

 永輝が思いやりのこもった口調で言った。

「いいえ、違うんです。両親のことは……永輝さんが一緒に実家に来てくれたおかげで、罪悪感が軽くなりました。でも、今は……永輝さんのそばにいたいんです」

 思わず本音を明かしてしまい、菜々は真っ赤になってタイトスカートの裾をギュッと握った。恥ずかしくて永輝の顔が見られず、視線を落として続ける。

「永輝さん、次は本気の恋をしたいって言ってましたよね? も、もし、今、好きな人がいないなら……あの……」

 私を好きになってもらえませんか? と言えないでいるうちに、永輝が口を開く。

「好きな子ならいる」

 その言葉に胸を突き刺され、菜々は言葉を失った。それきり永輝が黙ってしまい、部屋に落ちた沈黙が居心地悪い。それをどうにかしたくて何とか言葉を紡ぐ。

「あ、そ、そうですよね。変なこと言ってすみません。忘れてください。永輝さんならきっとその方とうまくいくと思います」
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