シンデレラに恋のカクテル・マジック
 良介は言って、すぐに考え直したように続ける。

「いや、私が蒔いた種だから、私が後始末をしなければなるまいな」

 祖父が力なく笑った。その笑顔が寂しそうで、菜々は思わず祖父に近づいた。

「おじい様」

 心配そうな孫娘の顔を見て、祖父が表情を引き締める。

「安心するな。おまえたち二人が別れたら、すぐに見合いの手配をするからな」

 良介の言葉がどこまで本気かわからず菜々は困惑したが、永輝がきっぱりと言う。

「別れることなどありません」
「勝手にしろ」

 そう言って良介がふいっと顔を背けた。暗くなった窓の外を見つめるその背中は、菜々が見た中で一番優しい祖父の背中だった。 
< 270 / 278 >

この作品をシェア

pagetop