シンデレラに恋のカクテル・マジック
 菜々が名残惜しそうにグラスを見ると、その顎を永輝がつまんで、甘いカクテルの香りが残る唇にそっとキスを落とした。すぐに離れると思った彼の唇は、菜々の唇をついばみ始める。

「永輝さん?」

 彼の手が菜々のフレアスカートの下へと忍び込んだ。柔らかな太ももを撫で上げられ、菜々はあわてて体を離そうとしたが、後頭部に永輝の片手が回され、キスは菜々を離すまいと深く熱くなる。

「あの……ここでは……」

 そう言いながらも、どうしたって甘い吐息が混じる。そんな菜々の声を聞いて、永輝が唇を触れ合わせたままささやく。

「〝後で覚悟しておいて〟って言っただろ?」
「でも……こんなところで……あっ……」

 それ以上の抗議の言葉は、もう永輝のキスにとろかされて出てこなかった。永輝が向き合ったまま菜々を抱き上げ、ソファへと運ぶ。淡い明かりの中で二人の影が重なり、カウンターではグラスの中のサクランボがくるりと回転して、恥ずかしそうにその色を深めた。

 Happily ever after. お姫様は愛する人と末永く幸せに暮らしましたとさ。

【了】
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