シンデレラに恋のカクテル・マジック
「そんなに警戒しなくても……。菜々ちゃんには手を出さないって約束しただろ」

 永輝に言われて、菜々の全身を駆け巡っていた熱い血流が一気にその熱を失った。

「あ、そ、そうですよね……」

 彼の言葉は菜々自身、何度も念押ししてきた言葉だ。

(それなのにがっかりするなんて……私ってば何を期待してたんだろう)

「それじゃ、客間に案内します」

 菜々は階段を上って、自分の部屋の隣にある客間に永輝を案内した。押し入れを開けると、永輝が布団を下ろした。

「干してない布団ですみません」
「いいよ。俺はどこでも寝られるタイプだから」
「そうなんですね」
「うん。じゃあ、おやすみ」
「はい、おやすみなさい」

 菜々は客間を出て、隣の自分の部屋に戻った。二年前の夏に出て行ったときのまま、何一つ変わっていない。変わったのは、またこうして戻ってきた菜々自身だろうか。

(また帰ってこられるなんて思わなかったな……)

 どうしても帰れなかった、家族三人の思い出がいっぱい詰まった家。菜々はエアコンのスイッチを入れて、ベッドに横になった。ヴーンと鈍い音がしてエアコンが作動し、室内の気温が徐々に下がっていく。
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