ひねくれ作家様の偏愛
律動に身を任せながら、私にささやいた。


『千弥……、千弥……、やっと触れた。やっと俺のものにできた』


『智くん……』


『あんただけだ。……俺を丸ごと受け入れてくれるのは。……俺を理解しようとしてくれるのは』


熱に浮かされたうわ言のように、海東くんは繰り返した。
身体は大人の男性なのに、子どものように熱心な瞳が私を束縛する。


『絶対に離さない……俺から離れるのは許さない……。千弥、あんたはもう一生俺のものなんだ』


彼に揺すられ、弾む吐息の中から、私は伝えた。
あるいは、私も一時の熱病におかされていたのかもしれない。


『うん、智くんから離れない……。ずっときみのものでいる……』


海東くんが、いっそうきつく私を抱き締める。私は彼のこめかみにキスをして、身体にしがみついた。
痛みはマシにならなかったけれど、心が満たされていた。


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