ひねくれ作家様の偏愛
先日の出版会議でボツになったはずの海東くんの原稿が、再来月号から『ともし火』で連載と決まった。

確かに大御所作家のスランプ&ケガ入院というラッキーはあった。
しかし、そこで空いた誌面に採用する原稿を選んだのは、『ともし火』の木原編集長。あんなにバカにしていたのに、彼のあげてきた原稿を誰より買ってくれたのは木原編集長だった。
海東くんに連載をという話は、昨日私のところにきたばかりだ。

これで、彼は文芸誌『ともし火』の連載作家の仲間入りを果たした。
名実ともに“作家”だ。



「木原編集長、今週中にはここに来るって言ってるけど、海東くんの都合悪い日ある?」


立ち上がって私が聞くと、海東くんも立ち上がる。


「日にちを指定してくれたら、俺が九段下のオフィスに伺います」


「大丈夫だよ。わざわざ、きみが出かけてくれなくても」


「違います」


帰ろうとする私の後をくっついてきながら、海東くんはさも当然というように言う。
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