ひねくれ作家様の偏愛
もし、彼が私との関係を“恋人”として周知させたいとしたら、どうだろう。

いざ、彼が私を切り捨てたくなった時、不都合じゃないだろうか。
私としても、周囲に無駄に同情されたくないし。


……こんなことを考えてること自体卑屈で、防衛本能むき出しだ。



「桜庭さん?また、話聞いてないんですか?しまいにゃ、キスしますよ」


再び、海東くんの顔が間近く迫り、私は慌ててのけぞった。


「ご……ごめん!」


「で、行くんですか?行かないんですか?」


「いきます……」


「よろしい」


満足のいく返事だったようで、海東くんは浮かせていた腰を椅子に戻し、オムライスを片付ける作業に戻った。


「今、キスしたらデミグラス味ですよね。なんか、嫌だな」


キスを蒸し返され、私はフォークにひっかけていたコロッケを落とす。
海東くんの顔が見られずにいるうち、彼は続けて言った。楽しそうな声音で。

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